小金井京子先生のひとりごと
- 小金井京子
- 5月10日
- 読了時間: 2分
“了”と「過去形」 …… 誤文“×昨天我没去学校了。”に思う
「きのうわたしは学校に行きませんでした」
中国語検定試験4級の日文中訳問題である。単語としては「きのう」「わたし」「学校」「行く」のみで、これに「過去の事象」の「否定文」である、ということが分かれば中国語に訳すことができる。
ここでの時点表現(いつ)は“昨天”、中国語は時点表現を主語の前後で行うので“昨天我~”、あるいは“我昨天~”でよい。
次は述語部分だが「行った(“去了”)」の否定形で「行かなかった(“没去”)」になり、「学校に行かなかった」は“没去学校”である。
語順としても決してむずかしいものではなく、おそらく多くの学生は正しく「きのうわたしは学校に行きませんでした」 ⇒ “昨天我没去学校。”にたどり着けていることだろう。
ところが、である。せっかくここまでたどり着いた受験生の多くが、ふと「ん?問題の日本語は過去形じゃないか。“了”がなくていいのか?」と揺れ始めるのだ。
そして「あれ?あれ?……やっぱり“了”だ!」と迷いに迷った挙句、この誤文にたどりつくのである。
わたしも教室の現場で「最後に直して間違えちゃった…」という学生の声を何度聞いたことか。
4級の頻出問題である。つまり、ここには中国語を修得するために必要な重要語法ポイントが含まれていて、同時に日本人がよく間違える問題なのである。その一番の鍵となるのは、“了”と「過去形」の関係性をしっかりつかめているかどうか、というところにあるだろう。
“了”は現在、過去、未来といった時制と直接の関係はない。学習者もそのことについては教室の現場で習っている。だから「行った 行かなかった」はそれぞれ“去了”と“没去”になるのだと理解していて、ここまでは正しい中国語に訳すことができている。
それでも、「学校に行った」「学校に行かなかった」……「行った」「行かなかった」と唱えているうちに、「どっちの文も過去形で…、だとしたらどっちにも“了”が必要なのでは?」と不安になってしまうのだ。
正解の中国語をただ丸暗記するだけでは、またどこかで「これって、“了”はいるの?いらないの?」と繰り返してしまう。だからこそ学習者のみなさんには、自信を持って正解にたどり着ける力を少しでも早い段階で身に付けてほしいと強く思うのである。
…… 次回は、“了”がどのように使われる言葉なのかについてのお話し。

Comments